【書評】ラブカは静かに弓を持つ
ラブカは静かに弓を持つ
小説すばるで連載していた「ラブカは静かに弓を持つ」が9月号で完結した。
音楽著作権管理団体である全著連(われわれの知るところのJASRACに相当する)の職員の橘は、上司に命じられミカサ音楽教室に生徒として通い、教室で著作権が及ぶ楽曲が演奏されている証拠を集めることとなる。橘はチェロを習うことになるが、講師やほかの生徒と親睦を深めるうちに「スパイとしての自分」と「生徒としての自分」との間で板挟みになる。
ラブカはいわゆる深海ザメの一種である。この種は胎生で、(深海に生息しており生態があまりわかっていないため)人工飼育が難しく、正確な測定はなされていないものの、妊娠期間は脊椎動物中最長の約3.5年と見積もられている。作中では「この長い妊娠期間をもつ生物を長期間潜入するスパイと重ねたスパイ映画がある」と描写され(この映画の劇中曲をつくった人は有名なチェロ曲も書いている、みたいな流れでこの話が出てきたのだと思う)、橘もまたそれと自分とを重ね合わせる。「弓を持つ」は言うまでもなくチェロを弾く弓を手に取るという意味だろう。
橘の葛藤~結末までは"順当に話が進んだ"と感じる。逆に言えばひねりがないと感じる人もいるかもしれないが、個人的には「この作品はこれでいいのだ」と思った。
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