【書評】本と鍵の季節
本と鍵の季節 米澤穂信
高校二年で図書委員の堀川が同じ図書委員で知り合った松倉とともに放課後の図書室に持ち込まれる謎を解こうと挑む、という形式。
六篇の短編となっているが、すべて地続きになっていて、(もう一度読むとしたら)それぞれの謎解きを通して現れる登場人物、とりわけ堀川と松倉の人柄には一層注目したいところ。
タイトルが示す通り、この物語では本と鍵が象徴的なものとなっている。たとえば、堀川と松倉が同じ図書委員という縁で知り合った点は、本によって二人は結びつけられたと言えるだろう(ふたりとも本はそれなりに読むものの読書家というほどではないらしいが)。また、二人が関わる謎にも本と鍵が関わってくるものが多い。
(以下、ネタバレというほどではないがこの本に興味を持った人にとっては興醒めになるかもしれないため注意)
「鍵」について少しこじつけ的な深読みをしてみると、これはもちろん物理的に金庫だとかロッカーの鍵を開けるという意味でも物語に関わってくるが、人のプライベートに踏み込むのも鍵を開けるようなものかもしれないと思えてくる。謎が持ち込まれるということはそれについて悩んでいる人がいるということだ。しかしながら、その謎を誰かに解いてほしいと思う一方で、それを解くために必要なピースとして個人の事情を詳らかに明かすことには抵抗があるという人も少なくない。また、金庫の中にあるものや、謎解きの手がかりとなる物はなにかとても"個人的な"物であるかもしれない。少しずつ答えに近づくなかで、依頼者の隠している個人の事情に勘付いたときに「鍵」を開けるのか否か。そういう視点を持ってもう一度読んで見るのもいいかもしれない。
"爽やかでほんのりビター"と宣伝される本書であるが、私個人としてはほんのりビターどころかかなりビターだと感じた。同じ著者の「ボトルネック」や「追想五断章」が好きという人は好意的に読めるのではないかと思う。
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