2010年代SF傑作選2
2010年代SF傑作選1 に続いて。
自分としては、1の「allo, toi, toi」ほど強烈に印象に残る作品はなかった。収録作品のなかで最も面白く読んだのは巻頭の「バック・イン・ザ・デイズ」だろうか。
物語の舞台では視覚情報や音などを記録して過去の体験を再現し、追体験できるという技術が出来ており、大衆向けに提供されるのも間近か、という時期。主人公は小さな田舎町で育ったが10代後半ごろから親との折り合いが悪くなり、一度街を出てからは全く寄り付かなくなってしまったという男。災害が地元を襲い両親が亡くなったため姉と相続などについてやりとりしていた折、先述の過去を追体験するサービスを開発しているテック企業の弁護士から連絡がくる。そこで主人公はこの企業が自分の両親を含む地元住民と協力して、住民らの視覚情報・聴覚情報のすべてを収集し、記録していたことを知る。そして、両親は収集した情報を主人公に開示することを依頼していたため、主人公はVRのような形で、仮想タイムスリップをする。そして、当時の自分・家族を、俯瞰的な目線で観察し、思いを巡らす。
これを書きながら思ったが、私は言葉で言い表せない人間関係の妙を描いたものが好きなように思う。この作品の場合、一言で表そうとすると「家族の絆」とかそういうものがテーマだとすることができると思うが、「家族の絆」のひとことでは十分の一も表せていないようなウェットな感じがなかなか好みだ。
そのほかの作品では「11階」も好きだなと感じた。これはどちらかといえばSFというよりはホラーと呼ぶほうが相応しいようなテイストだったが、楽しく読めた。仲が良かった少女の不幸な死をきっかけとして妻が幼い頃に背負った呪い(作中ではそういう言及はないがほとんどそう呼んで差し支えないと思う)を夫の目線から見つめ、二人の出会いから妻の死までを描いた話。
妻の不思議な人物像や、呪いによって妻が迷い込む「11階の世界」を表現する言葉の一つ一つがきれいで、引き込まれる文章だった。
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