【書評】友情 武者小路実篤

詳細なあらすじは Wikipedia などで見てほしい。

短くいえば主人公(野島)は女(杉子)に惚れ、いつも友人(大宮)に相談するが、杉子は野島などには目もくれず大宮しか見ておらず、そして大宮と杉子が順当に結ばれるというありがちといえばありがちな話だ。

野島は俺たちであり俺たちは野島だ

野島は大宮が自分のことを応援してくれていると心から信じていた。実際大宮は杉子に対してうっすらと好意を抱きながらも、野島を立ててサポートしてはいた。さらに、大宮は「杉子は自分に気がある」と勘づいて、野島のほうに目が向くように(もともとそういう希望があったとはいえ、)わざわざヨーロッパに留学までした。

それでも杉子の意志は変わらなかった。対面するときは野島に対して好意とまではいかなくとも敬意があるように振る舞いながらも、ヨーロッパに渡った大宮に彼女が宛てた情熱的な手紙では、野島はこき下ろされていた……とまではいかなくとも「あんなやつは眼中にない」と言わんばかりの、路傍の石同然の扱いだった。

大宮も大宮だ。少なくとも私からすれば「僕も実は杉子が好きやねん……」と言われたうえで上述の結果になるほうがまだ納得がいくのだ。彼はヨーロッパに渡ってからもはじめのうちは野島と手紙のやりとりをしていたのだが、ある時期からそれがピタッと止まり、そしてしばらくして突然に「こういう経緯があって僕は杉子と結ばれるねん」と通告してくる。

野島は友情という綺麗事と女の表面上の振る舞いという二つのものに騙され、裏切られてきたことを突然かつ同時に知る。そして彼はこう言う。「神よ我を救い給え」

野島は俺たちであり、俺たちは野島だ。世界の残酷さを見せつけられ、自己防衛のために「綺麗事はクソ」「女はクソ」「すべての人間はクソ」と息巻く。そして、それでもなお、騙され、裏切られる。俺たちはバカだからだ。そして更に自己防衛の呪詛を強くしていく。野島は俺たちであり、俺たちは野島だ。

神よ、俺たちを救ってくれ。

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