ボトルネック

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ボトルネック 米澤穂信

   主人公のリョウは高校1年生。2年前に事故で死んだ恋人を弔いに事故現場、東尋坊へと向かう。現場の崖へ行き弔ったのち、立ち去ろうとすると目眩がし、崖から転落してしまう。

が、気がつくとそこは見慣れた金沢の街(リョウは金沢在住)。不思議に思いつつも家へ向かうがそこには存在しないはずの「姉」がいた。

   「姉」はリョウのことなど全く知らない様子。リョウには兄がおり2人兄弟なのだが、兄が生まれたのち、リョウが生まれる前に母親は女の子を流産していたらしい。そしてリョウの両親は子どもを2人もうけたいと考えていたらしい。そして「姉」の年齢などの情報からそこは「姉」が流産にならずに無事生まれ、リョウが生まれなかったいわば並行世界なのだという仮説に至る。2つの世界はほとんど同じ世界だけど生まれてきたのが姉かリョウなのかで少しずつ違っている。その違いからリョウは自分のことを知っていく。

   思春期は自分のことを知っていく段階であり、そしてほとんどの人が夢物語から醒めて自分の惨めさをはっきりと認識するようになる時期なのではないだろうか。リョウは複雑な家庭環境も手伝って、なにか悲しいことや辛いことがあっても「そういうものなんだ」と受け入れられる性格だ。これも自分や自分を取り巻く環境の惨めさ・悲惨さに対する一つの適応なのかもしれない。それでも、もう一つの世界で、いわば自分の代わりに生まれた人間が、ほとんど同じ世界なのに、その資質によってほんの一部分においては全く違った、よりまともな結果をもたらしてしまっているという惨めさを味わうという点においては究極の経験にリョウは強い衝撃を受ける。

   物語を読みながら、自分の青臭い思春期を追体験したような気持ちにもなった。昔を思い出して少し恥ずかしかったりもしたが、内省するよい機会だった。

   米澤穂信といえば、ミステリー作家として有名だが、古典部シリーズに代表されるように日常に潜む謎解きを書くのが巧い。ここで私が書いたあらすじではミステリー要素は薄いように思われそうだが、実際「謎解き」に割く割合は少なく、「ミステリー小説」と聞いたときにふつうに連想されるものとはやや毛色が違うように思う。
   それでも、物語各所に散りばめられた何気ない描写が、全く無関係なようで実はつながっていて、急展開を生むところにミステリー的面白さは多分に感じられる。

   ここ最近に読んだ小説のなかでは、ダントツのおすすめ。

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