日食なつこ ミメーシス
日食なつこが3月30日リリースした4thアルバム、「ミメーシス」。
ミメーシスとは西洋哲学の概念で、「模倣」や「擬態」のような意味(wikipedia)。
“擬態”が具体的に何かというと、コロナ禍になって、しばらく触れていなかったもの……例えば映画や小説、マンガ、ゲーム、アートなどに触れる時間が増えたんですよ。そのなかで「いいな」ってビビッときたものへのオマージュというか、二次創作的に曲を作ってみたんです。オタクの一人遊びなんですよ、つまり(笑)。
上記のインタビューでは、音楽活動を始めてからは嫉妬が先に来てしまって、人の作品に触れられなかったと語っているのが意外で印象的だった(と同時にそういう姿勢だからこそ、混じり気の少ない、彼女独特の表現につながっていたのかもしれないと思った)。
音楽はもちろん、マンガもアートもゲームも映像作品もそうなんですけど、素晴らしい作品に出会うと嫉妬してしまっていたんです。でも、2020年の春に音楽業界がストップして、「今だったら嫉妬でグチャグチャになっても大丈夫かも」と思って。
曲のほうの話へいくと、個人的には「meridian」がとても好きだ。暗い気分になったときに寄り添ってくれるような感じがする。
この曲は12年前、高校3年生の受験期に作った曲だという。
――「meridian」を歌うと当時の気持ちを思い出す?
うん、すごく蘇りますね。この歌詞は実際のエピソードがもとになってるんですよ。進路に悩みまくった友達が、悩んだ末の結末を話してくれて。学校の女子トイレだったんですけど、そのときの風景も覚えているし、あの時間のことが身体に吸いついて離れないんですよ。
――日食さん自身も未来に対して明るい希望を持てずにいた?
明るい希望はなかったですね(笑)。暗い曲しか書いてなかったし、30歳になった自分もまったく想像できなくて。18歳のときの自分が今の私の作ってる曲を聴いたらビックリすると思います。
僕も暗いことばかり考えている人間だから、「希望だけじゃ生きていかれないよ」という歌詞はかなりグッとくるものがある。一方で人生経験を重ねてきて、それこそ18歳のころからは大きく成長して、希望が持てないなかでも「何やかんやで最終的にはなんとかなる」という思いも薄っすら抱えていて、「明けない夜はない」と押しつける側になりつつあるということも感じた。
「悪魔狩り」も印象的な曲だ。歌詞を見ればよくわかる、明らかな社会風刺だ(し、インタビューでも明言されている)。
――この楽曲に出てくる“悪魔狩り”や“魔女裁判”という言葉はすごく現代的なテーマでもあって。SNSでは毎日のように犠牲者が出ている印象もあって……。
そういうところはかなり反映されてますね。コロナ禍になって、ペストや天然痘が流行した時期のことが取り上げられたりもしましたけど、「私たちは結局、いろんな差別を乗り越えられてないんだな」と思って。歴史の教科書に載っていたことが、今まさに再現されているというか。
「夜警の火に駆り立てられ翻弄されるだけのお前が聖人君主(君子)を名乗るのかい」というフレーズは我々人間の性をよく表しているように思う。他人を糾弾するロジックが自分に対しても反転可能ではないかということはよく考えなければいけないし、そもそも言論を以って他人を殴ろうとするということ自体、大抵の場合邪悪な行為であると認識しておかねばならない。
そのほか、「シリアル」
や、「夜間飛行便」もなかなか好きだ。
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