構造素子
久しぶりに書評でも書いていきたいと思います。
構造素子 - 樋口恭介
第5回ハヤカワSFコンテスト大賞受賞作の文庫版ということで平積みになっており、タイトルもシンプルでかっこよく、思わず手に取りました。
売れないSF作家だった父が死に、主人公である息子が未完の草稿を母から渡され、それを読み、続きを書き足していく、というのが大まかな流れです。途中、L-P/V基本参照モデルだとか言って物語が語られる世界が違ったりするのですが細かいことを完璧に理解しなくてもいいと私は思います(というより私もよく理解できませんでした)。
この小説が伝えたいことは、解説でも述べられているように「世界は言葉でできている」ということだったように思います。
「言葉が物語を生み、物語の中に世界が生まれ言葉が物語を生み…」「言葉で伝えることができないことを伝えるために物語を紡ぎ、物語が言葉を生み…」
いろんなかたちで言葉と物語、物語と世界、世界と言葉について語ることができるかもしれませんがすべて「世界は言葉でできている」に帰結するのだと思います。
父が綴った物語から伝わるのは、父から息子への愛情です。幼少期の主人公と父とのエピソードの描写はなかなかに胸にくるものがありました。しかしながら(解説の引用が続きますが)、解説には
「この本は(父と子の)愛の物語、ではない。『この世には一言では表せない気持ちというものがあり(愛もその一つだ)、それは物語にしなければだれにも伝わらない』ということを、複数の、互いに独立したプロットを持つ物語を投入して、描いた本である」
とあります。私は読んでいる途中完全に自分の父と自分を重ねながら読んでいたのですが、これから読む人にはそこにこだわらず「一言では表せない気持ち」にフォーカスして読んでほしいと思います。
ともあれ、著者による補記には
「全ての読みとは誤読にほかならず、(中略)全てが当然のごとく誤っているのだとすれば、誤っているという意味で正しいと言うこともでき、あなたがそう思うそういう意味で、あなたの読みは全て正しい」
とあり、私たちは好きに読めばいいということです。
とにかく、ページ数が多く、構造も複雑で難しいのですが、言葉と言葉がつくる世界について考えさせられる作品で面白いと思いました。
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