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18きっぷその3

特に行くあてもなく電車に乗って外の景色を眺めていた。途中、少年野球の試合が見えたり、高校球児が練習に励むグラウンドが見えたりした。僕も白球を追っていたあの頃のひたむきな感情を取り戻せたら…と思った。 帰りに部活帰りの高校生が老夫婦に席を譲っていた。老夫婦は降りるときにその高校生らに「ありがとうね」と言って降りていった。人として大事なことを思い出させてくれたような気がした。

18きっぷその2

鈍行列車とはいえ、窓の外の景色はあっという間に過ぎ去っていく。日本の中でさえ僕の知らない景色、知らない世界がこんなにあってそこで人々の生活が営まれているというのは何か不思議な感覚だなと思った。 ずっと外を見ているのも飽きるし疲れるし車内の人に目を移す。自分と同じくらいの年代でJR時刻表を持ってる人はさすがに18きっぱーだろうなと思った。この時勢、若い人にとって冊子の時刻表が活躍するのは18きっぷ旅くらいでしょ。 気づけば車内はやや混んでいる。近くに年配の方もいる。僕は殊勝な若者だし、それに長いこと座ってると尻が痛くなってくるから無言で席を離れることとしよう。 僕の目の前に立っていた年配の女性はお座りにならず、30代中盤くらいのババアが座りやがった。 これが世の常。

18きっぷその1

勢いだけで家を飛び出した。とにかく遠くへ行きたい、行かなければならない。三島由紀夫の「葉隠入門」を開いた。『獅子が疾走していくときに、獅子の足下に荒野はたちまち過ぎ去って、獅子はあるいは追っていた獲物をも通り過ぎて、荒野のかなたへ走り出してしまうかもしれない。』という一文を読んだ。そうだ、僕も獅子なのだ、どこまでもどこまでも遠くへ行くのだ。そう思った。 あるいは山月記の李徴のような。発狂して家を飛び出し、電車でどこまでも行くうちに虎…ではないだろうな、でも、何かになってしまうような。